クチコミゲームと中古市場

ファミコン全盛期(1986〜92年頃)、今ほど中古市場の存在が一般的ではなく、ゲームは定価で買う高いもので、次のソフトを買えるまではじっくり遊ぶものという暗黙の了解があり、ちょっとプレイしてつまらなかったら売ってしまって、他のゲームを買うということはできませんでした。

私の場合は特に、つまらないゲームを掴まないように慎重になり、友人の家で面白かったものを親に頼んで買ってもらうという、いわゆるクチコミゲームで遊んでいました。

クチコミで広まるようなプレイして面白いゲームは発売日直後に注文が殺到するわけではなく、じわじわと売れて行きました。初代『ドラゴンクエスト』もクチコミゲームソフトにあたります。このじわじわと売れて行くクチコミゲームソフトの入手に関して、昔と今とでは大きな違いがあります。

 

当然ですが、再販の有無は注文の量で決まります。

中古市場の存在が一般的ではない時代、欲しいが見つからないソフトは直接玩具屋に注文していたので、注文の数も多く、再販(再生産)が多かったのですが、現在は、中古売り場を持つ新品販売店では、仕入値を考慮して買い取り値を決め、どうしても新品を希望する客以外には中古ソフトの予約(入り次第連絡というもの)を勧めています。

結果的に、問屋に行く注文の量が減っているということは明白でしょう。

 

現在の販売は流通の強化と流行廃りの激しさにより、発売日の出荷数でそのソフトの総販売数が決まってしまう傾向にあり、発売直後で注文が多く、供給が追い付かないヒット作品のみ再販(再生産)されています。

これはユーザー側からしてみると、一般のソフトは重版がかかりにくいという『売り逃げ方式』に見えます。

理由として、ヒット作品の再販には発売日用の生産ラインをそのまま稼働させていれば良いわけで、さほど費用もかかりませんが、発売後しばらく経ってから注文が来るような一般作品では、生産ラインもストップしていたわけで、再度動かすには多くの費用がかかり、再版費用を補えるほどのまとまった数の注文がないと利益にはなりません。

そのまとまった数というのが中古市場の存在により大きく制限されています。

殆どの客は探しているソフトがあれば中古でも買います。新品と値段を比べて中古を選ぶ人もいます。

注文は新品も中古も無い場合にのみ発生することになります。

再販の有無は、発売日に新品が売り切れて、中古が流れてくるまでの数日間にどれだけ注文がとれるかにかかっていることになり、結果、半年以上経ってしまったクチコミゲームは中古販売に頼ったほうが手に入り易いのが現状です。

中古市場の確立で、出荷本数が頭打ちになるという思わぬマイナス面が存在しているのです。